覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
「新刊はいつ出るの?」
と明子はまた笑顔で問うてくる。

「……今の企画が通ったらですかね?」

「例の謎のラブロマンスね」

 いや、『謎の』はつかなくていいんですけど。

 何処から謎が湧いてきました、と思う。

「そんなことより、気になることがあるんですよね」

「えっ?
 小説を書くより気になることがなにかあるの?」

 ……いや、ありますよ、と衣茉は、八尋の実家を訪れたときの話をした。

「ふと思ったんですよ。
 タピオカさえ食べてなければ、その方が八尋さんとお見合いされて、結婚されてたんだろうかなって」

「なにその、黄泉のものさえ食べてなければ、地上に戻れたのに、みたいなの」

 タピオカ、あなたたちの間で、どれだけ罪深い食べ物なのと言われる。

「だいたいさあ、その女性、まだ課長と見合いもしてなかったんでしょ?
 その人にも選ぶ権利ってものがあるんだからね。

 課長が断られる可能性もあったわけじゃない」

「ええっ?
 そんな人いませんよっ」
と衣茉は驚いて言う。

「課長に結婚しようとか言われて、断る人、この世にいます?」

「……あなたたち、実は、なにげにラブラブなんじゃないの?」
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