覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
「私、小説を書くために課長を利用してるんですかね?
 これって、悪いことなのでは……」

 明子は深く頷き言う。

「目的のために手段を選ばない女。
 悪女ね。

 いいじゃない。
 悪女っぽい話を書いたらいいわ。

 課長とのデートでは、結婚をエサにどんな感じに振り回したの?

 ――今のところ、メモして」

 はい、と素直にメモしたあとで、衣茉は考える。

「……えーと。
 デートですか。

 あっ、この間は、二人で自販機で買ったジュースを手に森の中を彷徨(さまよ)いましたね」

「自販機のジュースがちょっとショボいけど。
 二人で森を彷徨うってのは、いいじゃない。

 それで、どんな話をしたの?」

「森に住むシチューのおばあさんの話と、占いの店やってる友だちの子どものオレンジジュースの話と、紅茶の紙容器がいい匂いがする話ですかね」

「……それ、どうやって、ラブロマンス書くのよ」

 さあ? と衣茉自身も首をひねる。




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