覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 そういえば、千栄子さん、いろいろ嘆いてたな、と思い出す。

「こんなイケメンに産んでやったのに、この子ったら、昔から浮いた噂のひとつもないのよ。

 誰に似たのか、こんな堅物に育っちゃったから仕方ないんだけどね。

 もう微かな女性の影にでもしがみつくしかないわって感じだったんだけど」

 ……本人も気づいてなさそうな、微かな女性の影って。
 それは霊では? って感じなんですが。

「よくあなたみたいな人を見つけてくれたわ。

 ありがとう、衣茉さん。
 仲良くやりましょうね」

「千栄子さん……」

「それと、この本にサインして」
と八尋の持っていた雑誌を突き出されたのだが、長らくサインしていなかったので、おのれのサインが思い出せず。

「ちょ、ちょっとお待ちください」
と慌ててネットで自分のサインを探し、

 誰かが、
「綾原先生のサイン本ゲットしました」
と上げていたサインを見ながら真似て、

「いや、なんで、本人がニセのサイン書くみたいになってる!?」
と八尋に罵られたのだった。
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