捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 三日くらいなら店を休んでも、事前告知すれば納品や客足に影響はないだろう。何より久しぶりの素材集めにワクワクする。伯爵領にいた頃はよく魔石鉱山に入って自ら吟味していたものだ。

「お嬢様が同行されるのは却下です。私ひとりで充分です」
「え、どうして? 私だって採集できるし、今回は大量なのよ? ふたりで集めた方が効率がいいわ」
「採集場所は魔物も出るから危険です。私の精神衛生上、お嬢様は留守番でお願いいたします」

 アレスから思いっきり反対されてしまった。確かにアレスが来た頃には素材の採集には行けない状況だったから、心配するのもわかる。だけど、すっかり昔の自分を取り戻した私はこのまま大人しくなんてしていられない。
 こうなったら切り口を変えてみよう。

「アレスの幸せは私が幸せになることなのでしょう?」
「はい、そうです」
「私は何より籠の鳥のように閉じ込められるが辛いわ。それにいつもの量ならアレスにお願いするけど、今回はそれでは足りないの」

 アレスは眉根を寄せて悩んでいる。命令すれば簡単だけど、私を大切にしてくれるアレスをそんな風に扱いたくなかった。

「……わかりました。外では私の指示に従ってくださいますか?」
「ええ、もちろんよ。危険は承知だしアレスの指示に従うわ」
「それでしたら私が必ずお嬢様をお守りします」



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