幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「今度、ロートシルトの家に帰ろうと思うんだ。」
ギュンターが何気なく漏らすと、クララが不安そうにギュンターを見つめる。
「ご両親とはあまり折り合いが良くないんでしょう?」
クララには隠し事をしたくなくて、
自分がロートシルト家に養子で引き取られたことや、
生家は地方の男爵家であること、
ロートシルトの両親とはほとんど交流がないことは話していた。

「それって私のせい?」
遠慮がちにクララが質問する。
「私が伯爵夫人になれるかどうかを気にしているなら、そんなこと全然気にしなくていいの。私、爵位がなくったってギュンター様と一緒にいられるならそれで幸せよ。だからギュンター様がやりたくないことは無理になさらなくても・・・」
クララの気遣いが嬉しくて、ギュンターはクララを抱き寄せた。
それと同時に愛する女性に気を遣わせてしまっている自分が情けなくなる。
「クララのせいじゃないよ。いつかはと思って、ずるずると引き延ばしていた私に責任がある。それに今は疎遠だが、ロートシルトの両親は私に素晴らしい教育を施してくれたことは間違いない。その恩は今でも感じているし、彼らにもクララとの結婚を祝福してほしいと思っている。」
「ギュンター様のご両親が祝福してくださると私も嬉しいわ。」
そう言って微笑むクララが可愛くて、その唇にキスを落とす。
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