夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。


「違うよ。嫌いなんかじゃない。好きでもないのかもしれないけど,それでも大事だ」



嫌いな訳じゃない。

それに



「俺が許せないのは……俺なんだ」



だから,家にいることが出来ない。

目を背けているから,バラバラな家族を繋ぐテープになってやれない。



「3日を過ぎたとき。お母さんは嫌ならいいと,そっとしておくと言って。だけど父さんは無理してでも行けって。それが,学生の仕事だからって」



纏まらない親としての意見の中,あいつは頑なに引きこもった。

鍵もついていないただの部屋に,そこから律儀に毎朝いかないとだけメッセージを送って。

そんな毎日に爆発したのは,俺でもお母さんでも引きこもりの弟自身でもなく。

父さんだった。



『理由も言わず,毎日ただ寝ているだけ。そんなことが許されると思っているのか!!!』



弟の部屋の扉を開け,すぐ横の壁。

拳を突き立てた振動は,家族全てを凍てつかせ,ずっしりと建つ家全体を揺らしていたと思う。

今ではもうよく思い出せない程の,大きな恐怖。
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