夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
全てが正論で,俺には反論なんてなくて。
だけど怒鳴ったり物に当たったり,そんなのは違うような気が漠然としていて,やめて欲しくて。
だけど反射で蹴りを避け,平手を腕で庇い,弟が声を漏らした時。
その瞬間を,キッチンを経由しようと初めて目撃した俺は,困惑に声を失った。
間にはいってやることも出来なくて
『子を殴る親の気持ちがわかんねぇのかよ。殴る方だっていてぇんだよ』
後に続く言葉の数々に,言い返してやることも出来なくて。
ただひたすらに,その場にとどまって見ていてやることしか出来なくて。
そんなもの,意味もないのに。
『どいて』
屈辱に耐えるように俺へ絞り出したあの声を,俺は耳から離せない。
俺に見られたことで生まれた感情は,俺には分からないものだった。