夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
春陽くんは,躊躇うように私に近づいた。
「ほんとにいいの? あんな勝手なこと言って。ほんとは……!」
「し」
私はそっと,彼の口を塞ぐ。
本当は,おんなじ中学でも同い年でもない。
それが,彼の気がかりになるのは分かったいた。
「ほんとに,大丈夫だから。ね?」
瞬いて,彼は大人しく頷いた。
「じゃあ,そろそろ帰ります。ご馳走様でした」
「ほんとに送っていかなくていいの?」
「はい,すぐ来ると思うので」
「うーん……文世,迎えの来るところまで送ってってあげなさい」
いいのに,と思いながらも,文世くんを見ると。
堤くんはこくんと頷く。
その姿が春陽くんに重なって見えて,私は観念するように瞼を閉じた。
「いつもの公園まで」
チカチカと光るスマホを握る。
春陽くんは,十分すぎるほど頑張った。
もちろん,堤くんも。
だからきっと,最後は私なんだろう。
「じゃ」
「いやいや。わざわざ来たんだから,乗るまで見てるよ」
「やだなー。まったくもう。いーい? 私ね,お父さんに"女の子の友達"って嘘ついたの。見られたら困っちゃうな〜。あっほらほらスマホ光ってる。もう来るから! 私はこれで」
たったかたと,私は呆気にとられる彼から逃げるように公園を抜け出した。