婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 最近はますます無口だったユニコーンが、いつの間にか姿を現してソファーに座るわたしを見下ろしている。

「あら、返事するなんて珍しいわね。いいことが起きる前触れかしら?」

 ますます気分がよくなったわたしは、あることを思いついた。明日の国議でさらにあの女に恥をかかせてやろう。

 この時間ならまだ妃教育を受けているはずだ。まったく無駄な努力を続けているのに、気が付かないなんて可哀想で仕方ない。ついでに教えてやった方が親切というものだ。

 そこで、先日街で買ったひと口サイズの焼き菓子が目に入る。カラフルな色合いに惹かれて手にしたが、まだ開封もしていないしサイズもちょうどいい。

「ユニコーン、このピンクの焼き菓子に毒を仕込んで。そうね……吐き気と腹痛あたりで苦しむくらいがいいかしら? 前に仕込んだ分は気付かれていたみたいだから、今回はちゃんと工夫してよ」
《……わかった》

 そう言うとユニコーンは額から伸びる角を焼き菓子が入った瓶へ近づける。角が淡く光ったかと思ったら、感情の読めない青い瞳をわたしに向けた。

《この菓子の中心部に毒を注入し、結界で覆ってある。温度変化で結界が崩れるようにしたから、口に含めば確実に毒を飲ませられる》
「へえ、そんなことができるの? それならもっと早くやりなさいよ! まあ、いいわ。これからあの女のところに行くからついてきて」
《…………》

 また無言になったユニコーンは結界で身を隠して、わたしの視界から姿を消した。



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