婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
     * * *



 明日は国議で、フィル様の婚約者である私も出席するように言われていた。そのことを妃教育で礼儀作法の先生に尋ねてみる。

「先生。明日は聖女様の認定試験の結果発表があるため、私も国議へ参加するように言われたのですが、なにか注意すべき点などありますか?」
「まあ、国議へ? そうですわね……現在はラティシア様が婚約者ということに違いはありませんので、そのまま堂々となさっていればよろしいかと」

 つまり王太子妃としてふさわしい立ち居振る舞いをしろということだ。胸を張って正々堂々と、冷静に穏やかに微笑みを絶やさず——まるでフィル様のように。

 妃教育を受けて改めて理解した。

 フィル様が穏やかで優美かつ威厳あふれる姿を見せるために、本心を覆い隠してどれほど孤独でいたのか。周りが望むまま偽りの自分を演じるのが、どれほど心を削るのか。

 でも、これからは私が寄り添いたい。ひとりじゃないと伝えたい。本当の貴方を知っていると、そんなフィル様を愛していると伝えたい。

 そこへ侍女がやってきて、おずおずと口を開いた。

「ラティシア様、失礼いたします。聖女ブリジット様がお見えになっています」
「えっ、ブリジット様が? 約束もしていないし、今は妃教育を受けているのだけど……」

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