婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「あの、アルテミオ様は王妃様のご命令で付き添っていただいただけですし、お茶会にはグラントリー様以外にもエルビーナ様とイライザ様が参加されておりました」
「だから映像ではなくて、画像として証拠を提出しているんだよ。君、オズバーン侯爵の証拠を掲示してくれる?」

 フィル様が事務官に声をかけると、先ほどオズバーン侯爵が持ってきた箱の中から映像のワンシーンを切り取った画像を転写した紙が取り出された。

 私とアルテミオ様がふたりで歩いているシーンと、グラントリー様とふたりでお茶を飲んでいるように見える角度で切り抜かれたシーンだ。

 これは嘘ではないが、基本的な情報が抜け落ちている。しかも悪意を持って切り取っているのが明確だ。

「アルテミオが撮影していた王妃から命令された映像水晶と、グラントリー皇太子とのお茶会に参加していたエルビーナ皇女とイライザ嬢の証言記録を証拠として提出する」

 貴族たちが予想外の展開に狼狽(うろた)え、「信じられない」「ここまでするのか」「フィルレス殿下は優秀な王太子だぞ」と口々に囁いている。

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