婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「オズバーン侯爵の意見書に対しての反論は以上だ。これでもオズバーン侯爵の意見書が正しいと思うものは挙手を」

 会議室を見渡すけれど、貴族たちは誰ひとりとして手を挙げない。
 血縁関係者すら俯いたままでオズバーン侯爵の味方をする者はいなかった。

「国王陛下」

 フィル様の言葉で国王陛下はビクッと身体を揺らした。しかし、まだどこか余裕があるようで、すぐに姿勢を整えフィル様に反論する。

「フィルレス、お前の婚約者についてはわしとて十分吟味しておる。家格はオズバーン侯爵の方が上であるから、令嬢の資質によっては聖女であるブリジットの方が適しておるのだ」
「そんな理由でラティシアを排除しようとしたのですか? 聖女の方が王太子妃の資質があると?」
「そうだ! 大地の神が認めた聖なる乙女なのだ! 侯爵家であれば王族とも釣り合いが取れている。はっきりと目に見える形で幻獣ユニコーンも確認できたから、わしはそう判断したのだ!」
「そうですか、では聖女が本当に僕の婚約者になる資格があるのか、認定試験の結果を発表してもらいましょう」

 そう言って微笑んだフィル様は、清々(すがすが)しいほどの黒いオーラを放っていた。


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