婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 ラティを僕のものにするために、出会った時からさまざまな手を使ってきた。

 専属治癒士に任命して、婚約者になる条件を盛り込んだ契約書にサインさせのが今では懐かしい。
 それから婚約解消できるかもしれないと認定試験を持ちかけ、裏から合格するように手を回したこともあった。

 そんなことしなくてもラティなら合格しただろうけど、コートデール領では運悪く古代(エンシェント)ゴーレムに出くわして危なかったのだ。

 あの時は肝を冷やしたけどギリギリで間に合ったし、その後、初めてラティの額にキスできたからよしとしよう。

 直近ではユニコーンと密かに契約したことだろうか。

『それなら、まずはユニコーンを捕まえないとね』

 ラティが聖女と接触し、調査を進めていた僕は毒を盛った犯人がユニコーンだと推察した。
 そこで姿を見せない幻獣が相手なら、神獣に任せてみようと思ったのだ。

『フェンリル』
《おう、主人! 呼んだか?》

 僕の影からシュルッと銀狼が姿を現した。日中は毒物を嗅ぎ分けるためラティにつけているが、この時間なら動かしても問題ない。

< 231 / 237 >

この作品をシェア

pagetop