婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「アルテミオ様はフィル様といつもどんな話をされるのですか?」
「そんなことお前に関係ない」
「申し訳ございません、フィル様がアルテミオ様を悪く言ったことがないので、仲がよろしいのかと思いました」

 アルテミオ様はチラリと私に視線を向ける。

「ふーん、兄上は私を悪く言わないのか」
「はい、アルテミオ様のことを心配しておられるようでした」

 あまり接点はないようだけど、たまにアイザック様にアルテミオ様の様子を聞いたりしてから、弟として心配しているのではないかと思っていた。

「お前は……いや、なんでもない」
「……?」

 そこでフィル様の執務室へ到着し、先日と同じようにアルテミオ様が扉をノックする。

「兄上、ラティシア嬢をお連れしました」
「どうぞお入りください」

 今日はアイザック様がいるようで最初に対応してくれた。少しだけ疲れが溜まっているようだけど、その動きに無駄はない。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「こちらの書類をフィル様へ届けるよう、王妃様から指示されました」
「……それだけですか?」
「はい」

 訝しげなアイザック様と視線が合う。すると、またあの甲高い声が聞こえてきた。

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