婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 私が治癒室で勤務していた時は、命の危機にさらされてミスが許されない状況や、急患が何人もやってきて休憩すら取れないことなどよくあった。食事だって食べられる時に食べておかないと、退勤するまで飲み物だけで過ごす場合もある。

 さらに怪我は治っているのに何度もやってくる患者や、料金が高すぎるとごねる患者もいて、精神的にも過酷な職場であった。だからこそ治癒士たちの結束は固く、協力しあってきたのだ。

 それに今の私には心強い友人も、大切にしてくれる婚約者もいる。
 木箱を私の私室へ運び込み、ほどなくして客人がやってきた。

「ラティシア様、遅くなりましたわ。まあ、こちらが例のものですわね」
「お久しぶりです、ラティシア様。コートデール公爵家を代表して私、ジャンヌがまいりました」
「イライザ様、ジャンヌ様、ありがとうございます」



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