婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 実は前夜、寝室でフィル様からこんな提案をされていた。

『ラティ、王妃が妃教育という名目で、無茶な仕事を押しつけてくると情報が入っている』
『どんな仕事かわかりますか?』
『王妃が処理すべき案件をラティに振るつもりのようだ。でもね、これを引き受けてほしい』
『引き受けるのは構いませんが、それでは政務に支障をきたすのではありませんか?』

 王妃様が処理する案件など私の判断で決裁していいはずがない。国家機密に関わることだってあるだろう。

『本当にマズいものは僕が処理するように手配したから大丈夫だよ。それに強力な応援も頼んでおいた』
『応援といいますと、文官をつけていただけるのですか?』
『うん、文官でもあり特別ゲストでもあるかな』

 ニヤリと笑ったフィル様は安定の黒い笑みを浮かべていた。



 そこでやってきたのがこのふたりだ。

 しばらくの間、社会勉強の一環としてフィル様付きの文官として雇用契約を結んでいるそうで、こうした書類の処理も問題ないという。イライザ様もジャンヌ様も公爵家できっちりと教育を受けているので、この程度の仕事ならサクサクとこなせるらしい。

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