クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
鼻をつく消毒液の匂いが漂う部屋の照明がまぶしくて、思わず目を閉じる。

カーテンで仕切られている初療室は、殺伐とした空気が漂っていた。

「わかるか? わかったらこの手を握って」


隣で堀田先生の声がする。男の子の治療をしているのだ。


「すぐにCT行くぞ。準備は?」
「できています」


看護師らしき女性の声も緊迫している。


「天沢、お母さん頼んだ」
「了解」


先ほど電話をしていたドクターのようだ。凛々(りり)しい声の返事のあとに、ストレッチャーは出ていった。

それから新しいグローブをはめながら、堀田先生と違(たが)わぬ背の高い優しそうなドクターがやってくる。


「お母さんも治療しますね」
「天沢先生、お母さんじゃないそうで……」


看護師から事情を説明された先生は、大きな二重の目を見開いて驚いている。


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