彼女の夫 【番外編】あり
翌日、予定通りに帰社した俺は、急ぎの書面をいくつか処理して後続の指示を出した後、オフィスを出た。

2階の連絡通路を渡っていると、クリニックからスタッフがふたりほど出てくるのが見える。

19時を過ぎたところだから、そろそろ彼女も終わる頃だろうか・・。

クリニックの前まで行くと、ちょうど彼女が施錠しているところだった。


「蒼さん」

「あ・・玲生さん。お帰りなさい。
私、玲生さんの連絡先も聞かずに。それじゃ待ち合わせできないですよね」

「ほんとです、忘れないうちに登録しますか」

お互いにスマートフォンを取り出し、連絡先を登録した。

「玲生さん、晩ご飯行きますよね? ・・まだあの約束が有効なら、メキシカンかな。一緒に行ってくれる・・って」

「んー・・。有効は有効なんですけど・・」

家に・・連れて帰りたかった。

もちろん、彼女とそうなることを考えていないわけではないけれど、それよりも、店の時間をあまり気にせずゆっくり過ごしたくて。

でもな・・。
さすがにまだ・・。

「あの・・蒼さん・・」

「テイクアウトにしましょうか。玲生さん、移動でお疲れですよね・・だとすると・・」

どっちの家がいいか、というところで彼女も迷っているようだった。


「蒼さん・・キスは、してもいいですか?」

「えっ? あ、はい・・・・」

「じゃあ、俺の家に来てください。今日はキスで我慢しますから」

そう言った俺に、ふっ・・と彼女が小さく笑った。


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