彼女の夫 【番外編】あり
彼女と初めて過ごす夜を、どちらにするかずっと迷っていた。
俺の家か、ラグジュアリーホテルか。

ホテルの予約は一応済ませたものの、まだ決めきれずにいた。
あー、どっちにするべきか・・。


「玲生さん、お待たせしました」

クリニック前の通路で、壁に背中で寄りかかりながら目を閉じて考えていると、彼女が出てきた。

「お疲れさま。お昼食べてないでしょ、行こうか」

「え、いいの? いま食べてしまったら、晩ご飯が食べられなくなるかなって・・」

「それならそれで。俺も昼まだなんです。お腹の減り具合と相談して、夜は夜で考えれば。今日は時間あるから」

俺は彼女の肩に手を掛け、エスコートして外に出ようとした。

「・・・・玲生さんと一緒にいると、嬉しい気持ちと不安な気持ちが混ざって、複雑なんです」

少し寂しげな顔の彼女に、俺は戸惑う。
不安・・?

「今でも・・この瞬間でさえ、私でいいのかと考えてしまって・・」

俺は彼女の肩から手を外し、ふぅ・・と息を吐いた。
それを見て、彼女はハッとした表情になる。

「・・ごめんなさい、私・・」

「あ、いや、そうじゃなくて。呆れてるとか、そういうのじゃなくて。俺も同じだなって思ったから」

「え? 同じ?」

「うん。俺、そんなに自信あるように見えますか? 今だって、すごーく悩んでるんですけど」


俺は彼女の肩を引き寄せ、耳元に顔を寄せた。

「今夜、俺の家とラグジュアリーホテル、蒼さんと素敵な時間を過ごせるのはどっちだろう・・って迷ってるんです」


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