彼女の夫 【番外編】あり
『研修医の頃お世話になった教授に会いに来たの』

2年前に偶然会った時、彼女はそう言っていた。

以前クリニックのプロフィールに載っていた海外の大学病院がそうだと思い、所在地を調べるとやはりロサンゼルスにあって、思い切って電話をかけた。

教授に事情を話すと、彼女の居場所について心当たりがあると言う。


俺はロサンゼルスに到着してすぐ、レンタカーを借りてその場所に向かった。

「蒼・・もうすぐ・・」

はやる気持ちが抑えられず、俺はグッとアクセルを踏んだ。
目的地は、彼女と俺が2年前に訪れたメディカルセンターだ。

インフォメーションに立ち寄って用件を伝えると『アオイは今ブレイクタイムで、センター内にはいない』と言われた。
あと30分もすれば戻るようだが、待ちきれずに外に出る。

潮風に誘われるように海岸に向かうと、医療用スクラブ姿で、ベンチに腰掛けて海を見ている女性がいた。


「・・・・っ」


なぜか上手く声が出せず、無言のまま砂を踏みしめて女性に近づいた。

風にサラリと髪が揺れ、横顔が見える。
間違いない、彼女・・蒼だ。

俺は立ち止まり、目を閉じた。


何て言えばいい・・?
どう言えばいい・・?


そんなことより、彼女は俺を待っているのか・・?
会いたかったのは、俺だけなんじゃ・・。

急に怖くなって足がすくんだ。


その時、彼女がベンチから立ち上がりこちらを振り返った。


「・・・・え?」



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