彼女の夫 【番外編】あり
「そんな・・・・。どうして・・・・」



「アオイ! そろそろブレイクタイムは終わりだよ。一緒にセンターに帰ろう!」

戸惑いを隠せない彼女に、同じスクラブ姿の外国人男性が近づき、ごく自然に彼女の肩を抱く。

「アオイ? 早く戻らないとカンファレンスに遅れるよ」

「あ・・うん」

「アオイ、今日はデイシフトだよね? 今夜はディナーを一緒に食べよう。何がいいかな・・」


立ちすくむ俺のことなど目にも入らないといった様子で、外国人男性は彼女を連れて行く。

肩を抱き、食事を共にする仲なのだから彼女の恋人だろう。

俺は後ずさり、その場を離れるので精一杯だった。
結局、ひと言も話すことなく。


そうか・・。
そういうことか。
そうだよな・・。

もう、遅かったんだ・・・・。


よろよろとクルマに戻り、なんとか運転席に座る。
思わずハンドルにつかまって、深く息を吐いた。


彼女も、俺を待っていてくれるんじゃないかと淡い期待があった。
でも、そうじゃなかった。
会いたかったのは、俺だけだった・・・・。


「ハハ・・まいったな」

さすがに視界がぼんやりと揺れた。


ポタッ、ポタッ・・。
シャツの裾に、いくつも涙の染みが広がる。

下を向いていて良かった。
誰にも見られることなく、おそらく30年ぶりくらいに俺は泣いた。


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