彼女の夫 【番外編】あり
彼女は、俺と甘い時間を過ごす時だけ『玲生』と呼ぶ。
それは以前と変わらない、習慣のようなものだった。


この2年、俺は社長としての実績を重ね、彼女はロサンゼルスで内科医の経験を積んだ。

2年前、何も知らずに一緒にいたら、もしくは、ロサンゼルスで奇跡的に再会したまま離れずにいたら、俺はこんなにも彼女に想いを募らせ、社長を降りてでも寄り添いたいと強く願っただろうか。

それだけじゃない。
彼女を一時的にでも自分のもとから手放して、海外での医療経験を積ませようなんて考えただろうか。

今だから言えることだけれど、お互いを想いながら身を引いた2年間は、確実にかけがえのない時間となった。


「・・玲生・・っ・・んっ・・」

「蒼・・・・は・・ぁ・・っ・・」


俺たちは、何かを埋めるような勢いで身体を重ねた。

それは、会えなかった辛さなのか、伝えられなかった想いなのか、感じることのできなかった温もりなのか・・。

ただ見つめ合い、お互いを呼び合い、吐息のような声を漏らしながら官能に身を任せる。

お互いを蕩けさせるようなその感覚は、下腹部から背筋を伝い、脳の中まで痺れさせた。

「あ・・っ・・はぁ・・ぁあっ・・」


このひと晩だけで全てを満たそうとは思わなかったものの、手を伸ばせば届く距離で眠りについた彼女を見た頃には、静かに夜が終わろうとしていた。


< 70 / 109 >

この作品をシェア

pagetop