彼女の夫 【番外編】あり
胸の中に、暗い雲が広がった。

「・・・・」

急に黙った俺に、何か不具合でもあるのかと高澤はリストを見直しているものの、気づいた様子は無かった。

2年前の騒動は、河本には話していたが高澤には伝えていないからだ。

「社長、どなたか想定外の方がいらっしゃいましたか? どうしてもということでしたら、私からお断りの連絡を入れますが・・」

「いや・・・・大丈夫だ。それより高澤、明日は女性をエスコートして会場入りするから、そのつもりで」

「ええっ、本当ですか? そうか、だから会長もあんなにご機嫌だったんですね」

「さぁ、どうだろうな」


しかし、どう対処すべきだろう。
俺はともかく、問題は彼女と編集者がニアミスしてしまうことだ。

エスコートして会場入りするといっても、開始から終了までずっとそばにいることは不可能だ。
何なら、離れた一瞬の隙を待ち構えていることだってあるはずだ。

あの編集者が俺に向かって『蒼を愛していた』と言ったのは、ほんの数日前だ。
彼女にとっては今更かもしれないが、相手がどうかは分からない。

「まいったな・・。俺でさえ、まだ立場が危ういっていうのに・・」

もう離れたくない、ロサンゼルスで一緒に暮らしたいとは言った。
けれど、結婚についてはまだ触れていない。
彼女を急かすつもりがなかったからだ。

とはいえ、今すぐにどうというのは無しにしても、意思があることは伝えておくべきだろうか・・・・。

高澤が帰った後の部屋で、窓の外を見ながらぼんやりと考えていた。


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