彼女の夫 【番外編】あり
レセプションはプログラム通りに進んでいた。

彼女が唯一ひとりになるのは俺の挨拶の時間帯だけれど、それも無事に済んだ。
歓談中は常に彼女が横にいて、驚かれたり冷やかされたりしながら時間が過ぎていく。

それにしても、あいつは・・編集者はどこだ・・?
まだ会場内で見かけていないことが逆に気になった。


ガシャーーーン!!


「うわぁー!」
「きゃー!」


大きな音と悲鳴にそちらを振り返ると、親父が倒れている。

「会長!!」

彼女を連れて親父のもとに向かおうとした時、反対側に強く引っ張られる感覚があった。

「おまえ・・」

「服部社長、早くいかないと会長が大変なことになりますよ」

突然現れた編集者が、彼女を連れて行こうと引っ張っている。
隙を狙っていたようだ。

どうする・・。
親父か彼女か、どちらかを選ばなければならないのか・・?



俺は躊躇した。



「ギャッ!」

目の前で編集者が崩れ落ちる。
彼女がヒールで編集者の靴を踏んだのだ。

痛みで編集者の手が彼女から離れた瞬間、彼女はハイヒールを脱ぎ捨て、俺よりも先に親父のもとに走っていた。


「服部さん! 服部さん、聞こえますか?」

彼女は呼び掛けながら親父に触れ、意識レベルを確かめているようだった。

「そこのあなた、救急車を呼んで! 玲生さん、腕時計を貸して!」

彼女は高澤に救急車を手配させ、レンタルした指輪やブレスレットを全て外して床に置き、俺の左腕の時計を奪った。

秒針を見ながら、呼吸や脈拍数を確認している。

「服部さん、すぐに救急車が来ますからね・・。玲生さん、お母さまに連絡して持病が無いか確認を!!」

「分かった!」


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