彼女の夫 【番外編】あり
10分ほどで救急車が到着した。

何かあればすぐに行くからと伝え、病院には彼女に付き添ってもらった。
俺は主催者として、この場を収める役割があったからだ。

列席者からは会長を心配する声と、咄嗟に対応した彼女は何者なのかという声。
話が独り歩きするのを防ぐため、そのどちらにも明確には答えなかった。

最後のひとりまで見送り、深く息を吐く。
何とか無事に終わらせることができた。


「社長、病院に向かいますか?」

「そうだな・・。いや、少し待ってくれるか?」

高澤を待たせ、帰らずロビーにいた編集者に声をかけた。

「坂本さん・・。何しにここへ? 蒼に、会いに来たんですか?」

「・・どうだろうな。ただ、あなたは確実に蒼を探し出すだろうから、ここに来れば会えると思った。会ってどうするかはともかく・・」

「私はこれから父のところへ向かいますが、坂本さんも一緒に来てください。ちゃんと彼女と話すべきだ」


気まずそうな編集者を連れて、俺は高澤と病院に向かった。

彼女によると、搬送途中で容体が落ち着いたことから、今は彼女が勤務するメディカルセンターで処置を受けているとのことだ。


「玲生さん! こっちよ」

ドレス姿からいつもの医療用スクラブに着替えた彼女が、センターの入り口で待っていた。

「・・慎也(しんや)さん、なぜ一緒に・・」

同じ車から降りた編集者を見て、彼女はそうつぶやいた。


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