彼女の夫 【番外編】あり
「親父がお世話になりました」

「いえ・・。じゃあ服部さん、睡眠とお食事はしっかりとってくださいね」

「ありがとう先生。まさか、こんな形で世話になるとは思わなかったよ」

「お大事にしてください。手続きは別のスタッフがご案内しますね・・それじゃ」

親父に笑顔を向け、彼女は病棟に戻って行った。
俺には、ちらりと視線を合わせた程度だ。

「玲生、お前先生に何かしたのか? 仕事中とはいえ、随分とクールな対応じゃないか」

「・・親父が倒れた時、ちょっとあってさ。どうやら嫌われたらしい」

「ふぅん。迎えに来てくれたお礼に、いいこと教えてやろうか? 先生もさっきボヤいてたぞ。お前に言い過ぎた・・ってな。あ、来た来た、高澤こっちだ」

親父が手招きした方向には高澤がいて、いつの間に・・と思った。
俺をここに置いていこうという気が見え見えだ。
まったく・・。

「仕事終わりを待っててやれ。もうすぐ終わると言っていたから」

「社長、会長は私がお送りしますのでご心配なく」

「高澤、何か美味いものでも食いに行こう。じゃあな、玲生」

そう言うと、親父と高澤は俺をロビーに残してエントランスを後にした。
もうすぐ終わると言われても・・俺はどうしたらいいんだ。

でも、『言い過ぎた』とはどういうことだろう。
彼女が言ったことは、間違いじゃない。

俺が、彼女を手放したくなくてやったことだ。
親父に駆け寄るのを躊躇したことも、編集者と話し合う場を作ったことも。


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