彼女の夫 【番外編】あり
俺は、もう一度彼女に尋ねる。

「先生、私に見覚えありませんか? 私は・・あるんですけど」

「・・・・ふふっ、ありますよ。服部さんみたいなイケメン、会っていたら忘れない・・って言いましたよね?」

「えっ、だってさっき・・」

「私、肯定も否定もしなかったですよ?」

あ・・そういえば・・。
なんだ、そうだったのか。

俺はつい嬉しくなって、顔がニヤついたと思う。

「あの・・服部さん」

「何ですか?」

「・・すっごく美味しそうな匂いがするんですけど、近くのお店で買ってきたとか?」

薬を塗り、包帯を巻き終えたあたりで彼女が聞いてきた。
さっきテイクアウトしたタコスの匂いが、彼女にも届いたのだろう。

「先生、もし良ければ・・どうぞ」

「えー?」

「電車で助けてもらったお礼もしていなかったし、こんな時間に診てもらえたのもあるし・・。それに、誰かが仕事をしている横で食事するような人には思えなかったから、夕食まだだろうって。
メキシカン・・タコスです。好きですか?」

そう言った俺に、彼女は苦笑いした。
何か、変なこと言ったか?

「いえ・・不思議なことが起こるものだなって、考えていたんです。電車で、たまたま隣に座っただけなのに・・って。
あ、メキシカンって、もしかしてビルを出て少し左に向かった先にあるお店ですか? 一度行ってみたいと思っていたんです」

「じゃあぜひ。美味しいですよ」

俺は彼女に包みを渡した。


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