だからこの恋心は消すことにした。
「よしよし。泣き止んでよかった」
泣き止んだ私をカイが抱き寄せてポンポンと優しく背中を叩く。
カイの規則正しい心臓の音が私を落ち着かせていく。
そのまま私は数分、数十分と、ずっとカイの胸の中にいた。
*****
やっと落ち着いた私は急にやってきたカイとアランと向き合っていた。
「急にどうしたんですか?こんな時間に」
「ごめんなさいね、こんな時間に。だけどもう私たちが耐えられなくて」
「え」
アランはどこか辛そうだ。
一体何が耐えられないのだろうか。
もし、アランたちのような魔法使いでも耐えられないことがあるのなら微力ながら力になりたい。
「エイダンなんて忘れなさい。今のアナタは見ていられないわ」
「…俺もそう思う。アランから話は聞いたよ。勝手に聞いてごめんね。だけどラナどんどんやつれていくし、元気もなくなっていくし、心配で…」
「…」
そんなことか。
2人は私のことが心配だったのか。
「忘れられるものなら忘れたいです。間違えてしまったって私自身もわかっています。それでも好きなんです。どうしようもないんです。どうすればっ、私はっ!」
また涙が溢れた。
先ほどせっかく止めたはずのものが。
好きな気持ちは簡単に消えはしない。
簡単に消えてしまえばこんな苦労なんてしない。
だから苦しくて仕方ないのに。
「大丈夫よ、ラナ。私たちを誰だと思っているの?世にも恐ろしいこの国に選ばれた最高階級の魔法使いよ?できないことなんてないわ」
「え」
「ちょっと危険だけど俺とアランが力を合わせればラナのその恋心を消すことは可能なんだよ」
「そう。私たちがアナタのその要らない恋心を消してあげる。だからどう?その恋心捨ててみない?」
2人の美しい魔法使いが月明かりを受けながら鮮やかに笑っている。
あまりにも美しく、怪しい、まさに世が恐れている魔法使いのようだ。