だからこの恋心は消すことにした。
3.奇妙な行動
sideラナ
「ラナ」
王宮での会議を終え、離宮へ帰ってきた夕方頃。
疲労によりとぼとぼと離宮内を移動していると、私の目の前にエイダンが突然現れた。
光の粒を纏って現れたエイダンは相変わらず美しい。
金色のサラサラとした髪から覗くアメジスト色の瞳がこちらをじっと見つめている。
ここの魔法使いたちの中でもエイダンは特に気まぐれだ。
彼が何を思って私の前に突然現れたのかわからない。
だが、しかし彼が私に怒りの感情を抱いていることは何となくわかっていた。
だから先日、エイダンはその怒りの現れとして、私に無理やりキスをしたのだ。
エイダンの怒りの理由。
それは私がエイダンへの恋心を消してしまったからだ。
エイダンは人の不幸が大好きで、苦しむ様を見るのが楽しくて楽しくて仕方のない性格だ。
私がエイダンを好きで居続けるということは、永遠にその叶わない想いに苦しむということだ。
しかし私はそれを捨てた。
自分が楽になりたくて。またエイダンを不快な想いにさせたくなくて。
だが、それが間違っていたらしい。
エイダンは自身が不快な想いをするよりも、私が苦しむ様を見ていたかったようだった。
だからエイダンは勝手に自身への恋心を捨てた私に怒っているのだ。
「…エイダン。どうされましたか?」
エイダンの怒りをこれ以上を大きくしないように、私はおずおずとエイダンを見上げる。
するとエイダンはその美しい瞳をスッと細めた。
「まるでこれから食べられちゃう草食動物だね、お前は」
どこか面白くなさそうな視線が私に刺さる。
「ねぇ、お望み通り食べてあげようか?」
「…食べないでください。それに望んでもいません」
ずいっとこちらとの距離を一気に近づけて迫ってくるエイダンから私は視線を逸らし、距離を取る。
以前までの私なら心臓が跳ね上がり、平静など保てない距離感だが、今の私であれば平気だ。
何とも思わない。