だからこの恋心は消すことにした。
「早く取ってくれない?」
「ああ!失礼しました」
不機嫌そうにそう言ったエイダンの言葉によって、私は慌ててそのケーキの箱を受け取る。
「それはお前にだよ。だから紅茶もコーヒーもいらない」
「え」
エイダンから信じられない言葉が聞こえてきたので私は思わず、間の抜けた声を出す。
お前とは誰だろうか。
お前とは。
エイダンの言葉を上手く理解できず、じっとエイダンを見つめる。
私にじっと見つめられたエイダンの視線の先は私だ。
エイダンの視線の先=私。
つまり、お前=私。
「わ、わ、私にですか!?」
やっとエイダンの言葉の意味をきちんと理解した私は自身を指さして、大げさなほど大きな声で叫んだ。
そんな私を見てエイダンが「うるさい」と迷惑そうに耳を塞いでいる。
こんなに回りくどく考えなくてもわかりそうなものたが、それでも…、それでも信じられずにこの有様だ。
エイダンが誰かに自分の好きなものを渡すとは夢にも思わなかったのだ。
「ありがとうございます、エイダン」
やっと状況を理解してエイダンへと感謝の気持ちを伝えたが、そこにはもうエイダンの姿はなかった。
一体エイダンはどうしてしまったのだろうか。
「…っ!」
まさか!と思い、恐る恐るケーキの箱を開けてみる。
もしかしたら嫌がらせで中身はケーキではないのかもしれない。私をただぬか喜びさせたかったのかもしれない。
そしてそれをどこかでこっそり見ているのかもしれない。