だからこの恋心は消すことにした。
しかし箱の中身は私が予想したものではなく、普通に美味しそうなケーキが入っていた。
それも私の大好物のフルーツタルトだ。
…とんでもなくエイダンを疑ってしまったことをとてもとても申し訳なく思ってしまう。
だが、これでますます意味がわからなくなってしまった。
何故、エイダンは私の大好物のフルーツタルトをくれたのだろうか。
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それから私に怒っているエイダンの奇妙な行動は続いた。
私の大好物のフルーツタルトをくれたかと思えば、ある時は突然私に色とりどりの花の雨を降らせた。
そしてその中から一輪の花を選び、私に投げつけてきた。
またある時は食堂で私の隣に座り、私からフォークとスプーンを奪うと強制的にご飯を食べさせ始めた。
時折「おいしい?」や「ほら、しっかり噛めよ」などと私に声をかけながら私の様子を伺う。スープがまだ熱く、食べられない私に気づくとそれを魔法や己の息で冷まし、逆に少し冷えてしまったものには、これまた魔法で一番美味しく食べられる熱さにしてくれた。
私に会う度にエイダンは何故か私に絡んでくる。
最初は戸惑っている私を見て楽しんでいるのかとも思ったが、奇妙な行動を繰り返すエイダンを見て、そうではない気がしてきた。
どちらかといえば、私を気にかけて、私を喜ばそうとしている気がするのだ。
あのエイダンが?と思ってしまうが、どうしてもそう見えてしまう。
恋心を捨ててしまう前の私ならエイダンの行動一つ一つに心を動かされ、時には喜び、時には今と同じように戸惑っていただろう。
だが、それでもきっと戸惑いよりも嬉しいが勝っていたはずだ。