だからこの恋心は消すことにした。




こんなにもいろいろとされては消したはずの恋心が戻ってきてしまうのではないかと思い、心配になり、エイダンへの恋心を消してくれたアランにそのことを聞いてみると、



『消えた恋心は戻らないわよ、一生ね』



と、不敵に、そして何より怪しく笑っていた。
だが、続けてアランは言った。



『消えた恋心は戻らないけど、それはただラナがその想いを失って、フラットな状態になっただけよ。嫌な話だけど、もし、またアナタがエイダンへと魅力を感じてしまったのなら、それが恋へと発展してもおかしくない。戻らないだけでまた作ることは残念だけどできてしまうのよ』



はぁ、と大きくため息をつき、『心って難しいのよ』と嫌そうにしているアランの姿を今でも鮮明に思い出せる。
国中から恐れられ、できないことはないと言っても過言ではない彼でも〝難しい〟と思うことがあるのだと、あの時は心底驚いたものだ。


離宮内にある自室の浴槽で湯浴みを終えて、濡れた髪をタオルで拭きながら寝室へと戻る。
窓の外を見れば、そこには三日月が浮かんでおり、1日の終わりを私に告げていた。

今日も怒涛の1日が終わった。
魔法使いたちの生活のサポート、仕事のサポート、それから王宮での会議。
最近、王都の隣街ユルではまた魔物に関する事件が多発しているらしい。
現地の魔法使いだけでは手に負えそうにない相手らしく、ここの魔法使いたちに出動要請が出る可能性も高いとか。





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