だからこの恋心は消すことにした。
「何だよ、嬉しそうな顔してこっちに来やがって…お、エイダンも一緒じゃねぇか」
駆け寄ってきた私をマテオは気分良さげに見つめ、それからエイダンへも少しだけ視線を向ける。
だが、その視線はすぐに私へと戻り、私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。
「可愛いやつだな、お前は。ここへは任務だったか?」
「はい。任務が早く終わったのでエイダンと一緒に休暇を過ごしていたんです。マテオは飲みですか?」
「おう。ここにはいい店がいっぱいあるからよ」
「そうなんですか」
「酒も飯も美味いんだよな、ここら辺の店。お前らもどっかで飯食ったんだろ?美味かっただろ?」
「はい。とても」
マテオと私の間で会話が弾む。
豪快に笑うマテオに私も一緒に笑っていると、ふとエイダンのことを思い出した。
エイダンのことを置いて駆け出してしまった。
そのことに気づいた私は慌てて、エイダンの方へと振り返った。
「…っ」
そして息を呑んだ。
キラキラと輝く街の灯りを受け、輝くエイダンの表情には冷たさしかない。まるで先ほどまでの上機嫌が幻だったのかと思えるほどの変わりようだ。
エイダンの冷たい怒りを感じ、私は萎縮した。
「…エ、エイダン」
それでも何か言わなければと、エイダンの名前を恐る恐る呼ぶ。だが、エイダンはただ真っ直ぐとこちらを見るだけで私に応えようとはしなかった。
そして紫の光の粒子と共にその場から姿を消した。
「器の小せぇヤツだな、アイツは。ちょっと自分以外に行っただけであんなになるとはな」
戸惑っている私にマテオがいつもの調子で笑う。
それから「エイダンもどっか行っちまったし、一緒に飲むか?」と誘われたが、私はそれを丁重にお断りして、急いでホテルへと帰った。
もしかしたらエイダンがいるかもしれないと思って。