だからこの恋心は消すことにした。
6.2人だけの世界
sideエイダン
アイツ…ラナが俺への恋心を消したと知ってから、俺はずっとまたラナが俺に恋するように思いつく限りのことをした。
甘く囁いてみたり、甘やかしてみたり。
尽くして、できる限り一緒にいた。
俺ばかりラナを想うこの状況が嫌で始めたことだったが、案外ラナに構うことは悪くなかった。
むしろ、楽しさや幸福を感じる俺がいた。
それでもラナは変わらなかった。
俺に恋心が悟られる前と全く同じだった。
どの魔法使いにも向ける優しい笑顔を俺にも当然のように向ける。
そんなラナが嫌で、俺は何とかラナをこちらに堕としたかったが、それは叶わなかった。
想うだけでいい、と遠い昔誰かが言っていた。
叶わない恋でもその相手が幸せならば、自分と結ばれなくてもいい…と。
その時は、そんなものなのか、と漠然と思っていたが、今は違う。
そんなもの耐えられるわけがない。想うだけでいいとは何と高尚な考えなのだろう。
同じがいいのだ。
俺が想う分だけ、相手にも想って欲しい。
それ以外はいらない。
だからラナも俺と同じように俺を想って欲しかった。
ずっと変わらないラナだが、もしかしたら以前のように恋心を上手く隠しているだけなのもしれない。
心なしか俺を見つめる目があの頃と同じように見える時が何度かあった気がした。
だからラナに自身の気持ちを言うように促したのに、結果はあれだった。
…ラナは俺から逃げた。
「…」
俺はただ黙ってベッドの上ですやすやと眠っているラナを見下ろす。
ここ、ラナに用意されているホテルの一室には当然だが、光は一切ない。
窓にはカーテンがあり、もちろん照明もついてないからだ。
その暗闇の中で俺はただじっと規則正しく寝息を立てるラナを見つめていた。