だからこの恋心は消すことにした。
コイツの心を手に入れることはもう諦めた。
「…ん」
俺にずっと見られているとも知らずにラナが小さな声を漏らして、寝返りを打つ。
ずっと見ていられる光景だ。
この光景は今日から俺しか見られないものになる。
「…これからはずっと2人だよ」
ふ、と小さく笑うと俺はラナに触れ、この場からラナと共に消える為に魔法を使った。
心が手に入らないのならそれ以外の全てを俺のものにする。
そう決めたのだ。
*****
「ん…」
小さなラナの声がこの小さな部屋に響く。
ベッドとテーブルと椅子。それだけが並べられた木造の小さな部屋で俺はラナの目覚めを待ちながら、椅子に座り、本に何となく目を向けていた。
眠っているラナを連れ去ってもう半日が経った。
ラナには連れ去る時に目覚めないように魔法をかけたが、その魔法の効力もそろそろ切れる頃だろう。
だから俺はここでラナの目覚めを待っていた。
「…んん。…ん?」
ラナの声がまた聞こえた後、ガサッと衣擦れの音が聞こえる。
それからラナが体を起こした気配を感じたので、俺はすぐにラナの元へと向かった。
「…エイダン?ここは…」
まだ頭が回らない様子のラナが寝ぼけ眼に俺を見る。
ぼんやりとしているラナだが、ここが明らかに自身が宿泊していたホテルの一室ではないと気づいたのだろう。