だからこの恋心は消すことにした。
「ここ?ここはとある雪山にある俺の拠点の一つだよ」
「はぁ」
俺の答えを聞いてもラナはよく状況を理解していない様子だった。
それもそうだろう。俺はラナに聞かれたことしか説明しておらず、大事なことをまだ何も説明していない。
「私はユルのホテルにいたはずですよね…?それが雪山のエイダンの拠点にいるなんて…」
俺の説明を受け、今自分の身に起きていることを冷静に把握しようとラナが小さな声でぶつぶつと何かを呟いている。
その姿にはもう先ほどのような眠気はなく、はっきりと意識が覚醒しているようだった。
「…私が何故、今ここにいるのか教えてもらえませんか?」
そしていくら考えても何故、自分がここにいるのかわからなかったラナは首を傾げながらそう俺に問いかけた。
「何故?それはお前を俺だけのものにする為だよ」
「え…?」
「ふ、間抜けヅラ」
怪しく微笑む俺にラナが文字通り、間抜けヅラを俺に晒す。
状況を理解できず、口を小さく開けるラナ。
愛らしくて愛らしくて仕方のないその姿に俺は思わず、笑みをこぼした。
この小さな愛らしい生き物はもう俺だけのものだ。
全て全て俺のもの。
「何もわからない秘書官様の為に俺が説明してあげるね。お前はこの世で一番強くて悪い魔法使いに捕まってしまったの。お前はもう逃げられない。一生ここで生きていくんだ。わかった?」
上機嫌に笑う俺にラナが戸惑いの視線を向ける。
「…あのまだよく状況を理解していないので、いくつか質問してもいいですか?」
それからおずおずと俺の様子を伺いながら遠慮がちに小さく手を挙げた。
そんなラナに俺は機嫌よく「どうぞ?」と頷く。
「悪い魔法使いとはエイダンのことですよね?エイダンは何故私をここへ一生閉じ込めるのですか?エイダンのだけのものにする理由もよくわからないのですが…」
「…お前優秀なくせにそこは鈍いんだね。いいよ、教えてあげるよ。それは俺がお前を愛しているからだよ。だからお前を閉じ込めるの。もう誰の目にも触れられないように。お前が俺だけを見るように」
「…え」
俺の言葉を聞いて、ぶあっと一気にラナが頬を赤く染める。
こちらを見つめる愛らしい瞳は大きく見開かれ、信じられないものでも見るような目をしていた。