だからこの恋心は消すことにした。
「…へ、あ、え、え?」
いつも冷静な秘書官様が間抜けヅラで口を何度もパクパクさせる様は見ていて飽きない。
何度もただ「え」や「あ」、「へ」と言った意味をなさない音を出し続けるラナは見ていて滑稽でとても面白かった。
俺からの好意がそんなにも驚くようなものだったのだろうか。
こんなにも驚き、取り乱しているラナは初めて見た。
それこそ自分の恋心を俺に暴かれた時だってこんな姿は見せなかったというのに。
「…んん、失礼しました。少々取り乱してしまいました」
しばらくすると、ラナは恥ずかしそうに軽く咳払いをして、瞼を伏せた。
未だに頬を赤らめているラナはとても愛らしく、ここへラナを閉じ込めて正解だったと、心の中で自身の選択を称賛する。
この顔を俺ではない誰かが見る機会があったなんて考えたくもない。その可能性を潰した俺は何と素晴らしい行動をしたのだろう。
「…エイダン。私もアナタに伝えなければならないことがあります」
しばらく恥ずかしそうにしていたラナだが、意を決したように視線を上げ、真剣な眼差しをこちらを向ける。
そんなラナの頬は未だに赤い。
まるでりんごのようだ。
愛らしい秘書官様をじっと見つめ、「何?」と次の言葉を機嫌よく待つ。
するとラナは瞳を潤ませながらゆっくりと口を開いた。
「…わ、私も、実はエイダンのことが好きなんです」
「…へぇ」
何て笑えない冗談を言うのだろうか。
ラナの言葉を聞いた瞬間、あんなにも機嫌のよかった俺の心は一気に温度を失った。
心がどんどん冷たくなる。