だからこの恋心は消すことにした。
「エイダンめ。ラナを攫うなんて許せない!」
「こうなったら私たちで力を合わせて殺してしまいましょう!」
「絶対に逃がさない…。どんな手を使っても見つけ出す」
「殺すならあの魔法道具も必要じゃないか?」
「ラナ今頃泣いてないかな?エイダンに酷いことされてないかな?」
「そもそもおかしいと思っていましたよ、ええ。初めから怪しいとね。奴はきっとラナを攫って…」
マテオたち以外の、他の魔法使いたちの様々な慌ただしい声まで聞こえてきたのだ。
どうやら階段の奥、向こう側にはこの離宮の魔法使いたち全員がいるようだ。
しかも話の内容的に私がエイダンに攫われたから全員で取り返しに行こうとしている真っ最中らしい。
早く誤解を解かなければ。
このままでは大変なことになってしまうのは目に見えている。
…まぁ、攫われた、という魔法使いたちの認識は正しいのだが。
「皆さん!私はここにいます!ご心配おかけしてすみませんでした!」
私は向こう側にいる魔法使いたちの誤解を解くために、その場でそう叫んだ。
その後、その場を丸く収めるために大変苦労したことは言うまでもない。
エイダンが「お前らのラナはもう俺のものだから」と、ただでさえ殺気立っていた魔法使いたちを挑発した時はこの離宮の玄関ホールの半壊を覚悟した。
結果、エイダンの一言によりヒートアップした魔法使いたちは、私の予想通り魔法を屈した大喧嘩を始め、玄関ホールどころか、離宮自体を半壊したのだった。