だからこの恋心は消すことにした。
「…何て顔しているの。ああ、やっぱりお前は気持ち悪いね」
悪意に満ちたエイダンの顔。
だけど満ちているのは悪意だけでこの前のように不愉快そうではない。
むしろ顔を真っ赤にしている私を何故か愉快そうに見ている。
エイダンが何を考えているのかわからない。
「キスしてあげようか?マテオみたいに」
「え!?」
「魔力をあげるってことだよ?意味なんてないから。欲しいでしょ?俺の魔力。きっともっと周りの人間はお前を怖がるよ?」
「…いっ」
要らないと言わなければならない。
そんなことはわかっている。
だって他の魔法使いにそう言われたらきっと私はすぐに「要らない」と言うから。
エイダンも一緒でなければならない。
もうこれ以上彼に異性としての思いをぶつけてはいけない。
だけど、彼にならキスされたい。
「要らないです」
「ふーん」
エイダンはニヤニヤと嬉しそうに笑っている。
どうしてそんな顔をするのかわからない。
エイダンは確かに私からの思いが気持ち悪いはずなのに。
「じゃあ、あげない」
にっこりと愉快そうにエイダンは笑うと私から距離を取った。
「お前、やっぱり気持ち悪いね。そんな女の顔するなよ?」
またエイダンから嫌悪感を向けられた。
不快そうなエイダンに申し訳ない気持ちになる。
辛くて辛くてどうしたらいいのかわからない。
「…ご、ごめんなさい」
私はそれだけ言うとマテオの腕から逃れて何とかその場から走って逃げ去った。
「エイダン、お前なぁ。本当、捻くれすぎ」
「何が?お前こそラナに何回キスすれば気が済むわけ?発情期なの?」
「はっ、お前、ラナのキスされた時の顔知らねぇの?アイツ、キスされる度にかわいい顔するんだぜ?あれ見る為なら何回でもしてぇよ」
「ふーん」