ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 グウェナエルが支配していた魔界全土の一部を、入念な話し合いにて魔王ララに譲渡した直後のことだった。彼女とは利害が一致していたし、なにより互いに納得したうえでの領土分割であったからまだいい。

 だが、野心家のブレイズはそこに無理やり横やりを入れてきたのだ。

「陛下の封印後、ブレイズはここぞとばかりに魔界全土を支配しようと目論んでいました。無論、そうならないように私が陛下の後を継いだわけですが……あの性格ですからね。私から権利を奪い取ろうと襲撃してきまして、あわや魔界大戦争ですよ」

「……結果は?」

「互角──引き分けですかね。互いに戦闘の続行不可能になるほどの致命傷を負ったので、ララの采配で両成敗になりました。その後は議論の果てに領土の一部を譲渡する契りを交わし、いまの形に落ち着いたというわけです」

 魔界全土を守り抜くことはできなかったが、そもそもすべての悪魔を問答無用でまとめ上げられる者など、グウェナエルのほかに存在しないのだ。

 一介の上級悪魔でしかなかったエヴラールにしては奮闘した方だろう。

「で、その目ってわけか」

「はい。あちらの闇魔法の衝撃波をもろに食らった結果、左目の視力はほぼ喪失。右目は光を感知できるほどで、すべてが強くボヤけて見えません」

「ほぼ見えていない……にしては、悟らせないな」

「大抵のものは気配でどうにでも感知できますからね。まあどうしようもないときは探知魔法を使いますが、日常生活で困ることはほぼありませんよ」

 とはいえ、グウェナエルの指摘通り、こと戦闘においては影響が多大だった。
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