ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
そこから勢いよく飛び出したのは、真っ黒な闇を纏った〝茨〟の蔓。それらはある一点、最奥にあった水柱を丸ごと包むように次々と巻きついた。
目には見えないが、瞬く間に茨に包まれた繭のようなものが空中に浮かぶ。
かと思えば、ほかの水柱が大きく音を立てて消えた。
バッシャアアアアアン!
ジルダ湖に逆戻りするかのように落下した水が大飛沫を上げる。──直前、グウェナエルはほぼ反射的に、その場の全員を囲んだ守の魔法陣を展開していた。
闇のベールの上に毒の雨が降り注ぐ。
一方ルイーズは、その飛沫さえも届かない場所まで上昇していた。そのまま茨が固まっている場所まで飛んでいくと、ふわふわと揺蕩いながら振り返る。
「パパ。この子、きれいにしちゃうね?」
「はっ?」
「きっとお魚さんも、はやく元の姿に戻りたいと思うから」
こともなげに告げると、ルイーズはふたたび手をかざした。
右手は茨の塊へ、左手はなぜか湖に向けられている。
ルイーズがいったいなにをしようとしているのかはわからないが、グウェナエルが感じたなんとも形容しがたい予感は外れてはくれなかったらしい。
「きれいにしなきゃ、みんな困っちゃうもんね」
どこか呑気にも聞こえるひとことが放たれたと同時。
ジルダ湖と闇の茨から、シュウウウウウゥゥゥと紫色の煙が立ちのぼり始める。
(おい待て。まさか、この水をすべて浄化するつもりか──!?)
ありえない。だが、たしかにルイーズは見事にやってみせている。
この立ちのぼる煙が毒素であることは明確なのだ。
やがて、その煙が完全に晴れた。