大嫌いなキミに愛をささやく日
「どした?いきなり」

「……ううん。何でもない」



向こうの方で、今度は煌人が牛乳を零している。



「わー!ごめん!零した!」

「(何やってんだか……)」



見たくなくても見えちゃう光景って、すごく面倒だ。

来年こそは違うクラスになりますようにと、まだ六月の今日、新年度への思いを早々にはせる。



「あ、鳳条くん。ここ濡れてるよ?」

「ほんとだ。平気だよ、すぐ乾く」

「ダメ。牛乳は放っておくと臭くなるから」



そう言って女子は煌人のシャツを、自分のハンカチで拭く。

煌人は「ごめんね」と言いながら、申し訳なさそうに女子を見ていた。

対して女子は……嬉しそうに頬を赤く染め、煌人を見ている。



モヤッ



「なんか、見てられない」


私がポツリと呟いたのを聞いて、なぜか泡音ちゃんは笑みを浮かべる。



「ねぇ凛、それはどういう意味で“見てられない”の?」

「どういうって、何が?」



私の言葉を聞いて、泡音ちゃんが「まだ自覚ナシか」と呟く。

その間も煌人たちを見ないように意識してるのに、彼らは視界の端にバッチリ写ってくる。



「ほら、もう臭くないよ!」

「本当だ、ありがとうね」

「どういたしましてっ」



「……」


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