愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
ククッと笑って体を離した彼は茶目っ気のある笑みを浮かべていて、成美はホッとした。

(私が嫌だということはないみたい。取り越し苦労でよかった)

その後に今夜は一緒に過ごせると思ったら、急に緊張感が高まった。

一緒にベッドに入る姿を想像し、恥ずかしさをごまかそうと早口で話しかける。

「お仕事お疲れさまでした。シャワーを浴びますよね? 私、ジャグジーにお湯を溜めてきます」

「いや、風呂は後で。これからもう一度出かけないと」

「そう、ですか……」

残念な気持ちを隠せず眉尻を下げたが、肩を抱かれて室内に誘われる。

「行こう。なにか持っていくものある?」

「私も行くんですか?」

「ああ」

急いでハンドバッグを肩にかけ、ドアへ向かう。

「どこへ行くんですか?」

「地元の人向けのレストランバー」

「私、お腹がいっぱいで」

ディナーを済ませてから一時間ほどしか経っていないので、食べられるのはアイスクリームくらいだ。

「俺も同じ。だけどどうしても行かなければいけない」

その理由を教えてほしかったが、微笑む朝陽の目に真剣な雰囲気を感じてなにも聞けずに隣を歩いた。

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