愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
ホテル前からタクシーに乗り、市街地方面へ。

片道二車線の大通りから外灯の少ない住宅地へと道を折れ、さらに十五分ほど進んだ場所で車が止まった。

青い屋根にグリーンの壁の木造平屋で、塗装が所々剥げている。

入口の横に置かれたネオン看板は、ガラス管が割れて点灯していない部分があった。

ドアは開放されていて、中から大音量のポップミュージックが聞こえる。

地元の人向けだと朝陽が言った通り、庶民的な食事やお酒が飲める店のようだ。

ハワイでも日本でも、これまで朝陽が連れていってくれたのは高級店ばかりだったので、あまりの雰囲気の違いに戸惑う。

(どうしてこのお店に?)

お酒が飲みたいだけなら、ホテルのバーラウンジやルームサービスでいいはずなのにと成美は不思議に思った。

異国の地元に根差したバーに入るのは初めてで、少し怖い気がした。

それを察してか朝陽が肩を抱いてくれて、おそるおそる中に足を踏み入れる。

店内は薄暗く、四人掛けのテーブルが六つと十席のカウンターがあって、八割の席が埋まっていた。

若者たちが賑やかに会話し、狭い通路で踊っている人もいる。

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