愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
腕や首にタトゥーを入れた若い男性が、体を揺らしてリズムを取りながら近づいてきた。

成美に向けて観光かと聞いたような気がしたが、崩した英語なので聞き取れない。

困って朝陽の方を見ると代わりに受け答えしてくれて、地元の若者はテーブル席の仲間の方へ戻っていった。

「大丈夫だよ。ここは観光向けの店じゃないが、ピザは美味しいから食べていきなと彼は教えてくれたんだ」

「そうなんですか」

頼りになる朝陽と一緒なら怖がる必要はないだろうと警戒を解き、並んでカウンターの端の席に座った。

カウンター内にはふくよかな女性店員がひとりいて、初対面ではない雰囲気で朝陽と笑顔で話しだす。

(藤江さんは何度も来店しているの?)

彼女はこの店のオーナーなのだそうで、妻だと紹介された成美は背筋を伸ばして片言の英語で挨拶をした。

「ハネムーン? ワーオ!」

オーナーの女性が頭上で拍手すると、気づいた客たちもそれに倣い、口々に祝福の声をかけてくれる。

成美は振り向いてペコペコと会釈し、嬉しさと恥ずかしさの両方に頬を染めた。

(皆さん、温かい人柄なのね。怖いと思って申し訳なかった)

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