愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「うちに借金がある話はしなかったの?」

事情を隠して娘にお見合いさせるような性格ではないけれど、この先もお世話になる雇い主には恥ずかしくて言いだせなかったのではないかと思った。

すると母がすぐさま否定した。

「もちろん、先生に話したわ。いいお話ですけど、借金返済中ですので遠慮しますと言ったのよ。でもね」

見合い相手は富裕層で、こちらに借金があっても気にしないと言われたそうだ。

さらには、『断られると私が困る。会うだけでもなんとかお願いできないか』と頭まで下げられた。

雇用主にそこまでされては無理だと言えず、母は娘に聞いてみると話を持ち帰ったという。

母の眉尻が下がる。

「ごめんなさいね。今時、お見合いなんて嫌よね?」

借金があるからという理由ではなく、きっと娘は見合いで出会いを求めていないだろうと、それについて申し訳なく思っているようだ。

「嫌ではないけれど……」

(今は誰とも交際できないから、会っても意味はない。こちらがそんな考えだと相手の方に失礼よ。でも、私が断ればお母さんが困るだろうし)

少し迷ってから、職場での母の立場を考えて結論を出した。

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