愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「私、お見合いしてみる」
「いいの?」
「うん。直接お会いして、私の口からうちの事情を話す。借金は気にしない人だと税理士先生が言っても、それはないでしょう。きっと相手の方から、お付き合いできませんとお断りされると思う」
わざわざフラれに行くようなもので、年頃の娘としては少々傷つくところだが仕方ない。
母に気を使わせないようフフッと笑ってみせ、ふたり分の食器を台所に下げる。
「それで、お相手はどんな方? 税理士先生のご親戚?」
「違うわ。先生の昔からの顧客の、ご友人の奥様の、従兄の職場の、えーと、それからなんだったかしら」
(つまり、縁もゆかりもない、ということ?)
繋がりが薄すぎる人からどうして自分のもとに見合い話がきたのかと、眉をひそめて振り向いた。
母は座卓を拭いていた手を止め、成美を安心させようとする。
「おかしな人じゃないから大丈夫。アカフジ電機のグループ会社で専務をされている、立派な方だそうよ」
「えっ?」
思わず台所の炊飯器を見る。
故障もなく八年ほど活躍している三合炊きの炊飯器には、〝AKAFUJI〟とメーカー名が刻まれていた。
「いいの?」
「うん。直接お会いして、私の口からうちの事情を話す。借金は気にしない人だと税理士先生が言っても、それはないでしょう。きっと相手の方から、お付き合いできませんとお断りされると思う」
わざわざフラれに行くようなもので、年頃の娘としては少々傷つくところだが仕方ない。
母に気を使わせないようフフッと笑ってみせ、ふたり分の食器を台所に下げる。
「それで、お相手はどんな方? 税理士先生のご親戚?」
「違うわ。先生の昔からの顧客の、ご友人の奥様の、従兄の職場の、えーと、それからなんだったかしら」
(つまり、縁もゆかりもない、ということ?)
繋がりが薄すぎる人からどうして自分のもとに見合い話がきたのかと、眉をひそめて振り向いた。
母は座卓を拭いていた手を止め、成美を安心させようとする。
「おかしな人じゃないから大丈夫。アカフジ電機のグループ会社で専務をされている、立派な方だそうよ」
「えっ?」
思わず台所の炊飯器を見る。
故障もなく八年ほど活躍している三合炊きの炊飯器には、〝AKAFUJI〟とメーカー名が刻まれていた。