愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
心から笑うと肩の力がスッと抜けて、また少し心が軽くなった気がした。

夫がコントローラーを置いて伸びをする。

「ゲームはこの辺で終わりにしよう」

「勝ち逃げですか?」

眉根を寄せると笑って額を小突かれた。

「意外と負けず嫌いなんだな。明日は日曜だし、またやろう。今は腹が減って。一緒にコンビニに行かないか?」

食材なら冷蔵庫にたくさん入っている。

夜食を作ると言おうとしたが、思い直して夫の提案に頷いた。

自分では変えられなかった窮屈で不自由な真面目さを、彼が壊してくれようとしている。

きっと夜中のコンビニも成美のためなのだろう。

秋もののニットの上にコートを羽織って出かける支度をすると、夜は寒いからと首にストールを巻いてくれた。

そんな朝陽はショートコートを羽織っただけの姿でスニーカーを履き、揃って自宅を出た。

一歩外に出たら、冷たい夜風が成美の肩下までの黒髪を揺らした。

マンションが建ち並んだこの辺りは繁華街から離れており、車や人通りは少なく静かだ。

二車線の道路沿いを夫と並んで歩く。

会社の忘年会などを除き、これまでは遅い時間に外を歩かなかった。

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