愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
夜は出かけないというのも子供の頃からの習慣で、大人になっても守り続けていたルールだ。

また真面目さが顔を出しルール違反に胸が苦しくなりかけたら、夫に手を繋がれた。

鼓動を弾ませて隣を見ると、優しく微笑んでくれる。

「大丈夫だよ」

頼りがいのある大きな手にホッとして、その温かさに勇気づけられた。

心の中で夫の言葉を復唱する。

(大丈夫。これは悪いことじゃない。私は変わりたい……)

コンビニは自宅マンションから三百メートルほどの場所にあり、ひときわ明るく見えた。

夜間のコンビニも初体験でワクワクと胸が高鳴る。

中に入ると「なにが食べたい?」と朝陽に聞かれた。

空腹は感じないのでヨーグルトかゼリーにしようと思ったが、レジカウンターの前を通るとおでんのだしのいい香りがしてお腹が鳴った。

小さなその音は夫の耳まで届いていないはずなのに、顔を赤らめてお腹を押さえたため気づかれてしまった。

ハハッと笑った彼がレジ前で足を止める。

「おでんをください」

「あの、朝陽さんが好きなものを買ってください」

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