愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
アカフジ電機は日本で三本の指に入る家電メーカーで、売上や従業員数は調べたことがないのでわからないが、巨大企業であるのは間違いない。

そのグループ会社の専務がなぜ自分に見合いを申し込むのかますますわからず、不安ばかりが増大する。

(有名企業の重役を務める方なら、家柄のいいお嬢様とお見合いするものでしょう? もしかして……)

思わず想像したのは、性格の悪さがにじみ出ているような顔つきの中年男性だ。

モラハラな言動に耐えきれなくなった妻が逃げ出し離婚したという架空のエピソードまで考えてしまった。

いくら借金返済中というハンデがあっても、意地悪な男性とは結婚したくないと思い、恐る恐る母に問う。

「すごく年上の方? 離婚歴もあるの?」

「違うわよ」

隣に立った母が成美の想像を笑い飛ばす。

スポンジを手に取った母に食器は自分が洗うと言ったが、首を横に振られた。

皿を洗いながら、母が思い出しているような顔で説明する。


「成美より四つ上の三十歳。有名国立大学をご卒業されたそうよ。背が高くてハンサムで、お写真では女性にモテそうな方だったわ」

「写真があるの? 見せて」

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